人の意識が変わって
空気が変わった

現場の人は何が楽しいのかがわからなかった。
だから、4ヶ月かけて、毎日それぞれの部門の人たち5人ぐらいと一緒にお昼ご飯を食べました。

そこで、彼女達は何を作っているのかわからないって。いろんな部品を使った基板を作っているけど、それが何に使われているのかわからないと話してくれました。

それで、その基板が何に使われているのか受注している営業に聞いたら、とても重要な基板だったり、みんながいつも使っているものだったり、ということがわかってきた。

それまでみんな生産性がどうで、在庫がどのくらいで、一日何個作ったらええってとこしか見てなくって。何が楽しくて働いているのかを考えていなかった。

何に使われているのかわかってくると自然と品質は上がっていきますね。

一番の変化は、2年目の6月やったな。
製造現場の女性から「今日、お客さん何人来られますか?」って社長室に電話がかかってきて「お客さん3人と、ぼくと生産の役員が一緒に回るんで挨拶を頼むわな」って答えたんです。

で、行ったら初めてスリッパが並んでた。それまで1年3ヶ月、私もお客さんも自分でスリッパを出していました。それに気がついた女性がいて、5つスリッパが並んでいたんです。

そしたら、お客さんが「今日、スリッパが並んでますね」「これ、ぼくらのですか?」って言わはって。

次の日の朝礼で、みんなが集まった時「昨日スリッパが並んでてお客さんがものすごく喜んでくれはった」と言ったら、その次のお客さんが来られた時にもスリッパが並べてあって、手書きのウェルカムボードができてて、花が生けてあって、まさにおもてなしの世界。

あるとき、お客さんが「高級旅館に来たみたいです」と言われた。だって、ぼくら高級旅館を目指してますもんって。嬉しかったですね。

「もの作りサービス業」は旅館と一緒って。
「九州一の旅館になる」っていうのがうちのスローガンで、こんなふうにして現場が変わり始めたんですよ。

ぼくは生産の詳細はよくわからないから、現場の事は信じて任せるしかなく、方向性を示しただけ。でも、全部が変わって行きました。

あとは、朝会社に行って車を駐車場においてから、すべての工場を「おはよう、おはよう」って挨拶して廻って。

それから、お昼休み。ものすごい広い工場やけど、駐車場や敷地を全部廻って落ちてるゴミを拾って歩きました。それで、こんなにゴミの落ちてる旅館あれへんでぇ言うて食堂の入るところに置いとく。そうこうしているうちに、綺麗になり始めた。

今でも覚えていますが、スリッパが並び始めた6月から単月黒字が始まりました。で、2年目で黒字化。
人の意識が変わって空気が変わったんだと思います。最後は凄くお客さんに褒められるようになりました。

わずか2年でしたが、日本を代表するある機器メーカーさんが400社ぐらいある中から表彰したい5社の会社の一社に選ばれて表彰状を受け取けとりました。

みんな何したんやろ?って調べてみたら、お客さんと勉強会を始めた人達がいてて。お客さんが言わはった部品よりも親会社が世界共通で買っているこの部品のほうが安いですよって勉強会を始めたんですよね。それをお客さんが喜ばはって、表彰したいって。

これも現場が知恵を出してくれた結果。現場わからへんから逆にこっちが教えてもらっている。あとは、それ面白いわぁって言うてるだけやもんなぁ。

誰がいいプレーを
しているか

現場のモチベーションをあげるのにどうしたら良いかというので、「マケレレ(*1)を探せ」っていうのをやりました。

スタッフ系一人、ライン系一人、月刊MVPマケレレを探せっていうので、マネージャー会がママケレを僕に推薦することにした。

怒る人はわかりますよね。失敗したら怒れるから。でも誰を褒めるか、誰が縁の下の力持ち"マケレレ"か、いいプレーしているかってよう観てないとわからない。

必ずしも自分の部下を推薦する必要もないのです。
おまえのとこのあいついいでぇって推薦してもいい。そうすると、いろんな人が見てくれると現場がわかり始める。

直のマネージャーと自分だけの関係性しかなかったら、この関係性が潰れたらもうしんどくて、うつになるしかないけど、横の課長が見てくれていたり、もっと上がみてくれていたり、この斜め横の関係があると安心できる。

マケレレに変な人を選んだら、なんであの人がマケレレなんやとか。だからちゃんと現場を見てないとあかん、人を見てないとあかんようになる。

今まではプロセスとか生産性とか数値は観ていたけど、みんな自分を観てくれたら現場はうれしいし。

第一回目のマケレレは、スリッパを並べてくれたスタッフが選ばれました。その後も、今まで生まれてから、親にも、誰にも一度も褒められたことがないという人が選ばれたり。
もう涙涙。

表彰だけでみんな嬉しくて一生懸命。数字は数字でしっかりみないといけないけど、人を見てあげるのも大切ですよね。

 

会社の幹を通して、みんなの響きの共鳴を促しているようですね。おもてなしの嬉しさとか相手が喜んでくれることの自分の喜びを見つけるチャンスを与えてたり、人に認められることの喜びとかいろんな角度で。

自分がこんなちっちゃいものを作っているのがどれだけ大きなものに影響するか知るだけでも、自分が今まであまり考えないでやってたことがもっと自分に取って意味あることになっている、響くものになっていく。

何よりも竹林氏が自らの行動で幹を体現している姿が素晴らしいです。

*1. マケレレ

クロード・マケレレ・シンダというヨーロッパの元フランス代表のサッカー選手。キャリアを通して守備的MFでプレー。
中盤の底のポジションはマケレレのポジションとして「マケレレロール」と呼ばれることもある。
シュートを決める目立つ存在ではないが、シュートを決める選手に確実にボールを出す目立たない存在ながらもチームにとって欠かせない存在として知られている。

インタビューを振り返って

「事業の幹とモチベーション、後は任せるだけ」

事業の幹、どんな目的を持って人々が集まっているのか。
利益だけに走ることなく、この幹を忘れずに行動を起こしていくこと。そして、その幹が人々にとって意味あるものであること(モチベーション)の大切さ。

意味を実感することで一人ひとりが響きを持って仕事ができる。みんなが響きから動くことで共鳴が起こり、おのずと利益があがる。組織においての響きの共鳴は可能であり、意味があることを教えていただきました。

また、竹林さんがとても大切にされている「変革」という価値観が生き方に常に現れているのが印象的でした。

一人でインタビューを振り返った時に、「響きから生きていくことが、自然と人の本質的な変化をもたらす。」ということが腑に落ちた感覚を感じました。

コーアクティブ・コーチングの土台として大切にしている「本質的な変化を呼び起こす」という考え方を、竹林さんは組織・企業の中でさまざまな形で実行されているのだと感じました。

あなたの響きが周りの人達と共鳴したら、どんなことが可能になるのでしょうか?

 

響きから生きる人たち インタビュー
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