ドコモ・ヘルスケアー株式会社 代表取締役社長 竹林 一さん

1981年、立石電機(現オムロン)株式会社入社。
事業企画室にて非接触ICカードシステム、ATM後方支援システム等の新規事業化に従事。
その後、駅務システム開発部にて国内・海外の駅務システムなどの大規模システムを開発プロジェクトリーダーとして推進。
新規事業開発部長、グーパス推進部長、セキュリティエンジニアリング部長、ICカード・モバイルソリューション推進室長、2008年にオムロンソフトウェア株式会社の代表取締役社長に就任、以後オムロン直方株式会社の代表取締役、オムロンヘルスケア執行役員を経て現職に至る。
(CTI応用コース19期修了)

著作に、『モバイルマーケティング進化論』(共著:日経BP企画)、『PMO構築事例・実践法』(共著:ソフト・リサーチ・センター)、『利益創造型プロジェクトへの三段階進化論』(日経ビズテック)、『THEエンジニアコーチング』(技術評論社「JAVA PRESS」連載)がある。

共鳴・智恵・幸せ

竹林さんにとって、「響き」とは何ですか?

僕の大親友で映像作家をやっている亭田歩さんという方がいはるんですが、今ドキュメンタリー映画「響き〜RHYTHM OF DNA」を創る為、世界中の原住民の方々のところを訪れて彼らが代々受け継いできた智恵をインタビューしておられます。

先日も台湾から帰国されたところ。そして2020年に富士山の裾野で大映写会をするというものなんです。

彼ら(原住民の方々)はすごくて、過去3代と先の3代、そして自分の世代も含めて7世代の生態系のことを考えながら生きておられる。

どうなったら先が良くなるか、自分たちの子供達が良くなるか、先祖は何をして来てくれたのか、それをずっと考えながらこの時間軸の中で生きている。

『共鳴しあってそこから生まれ、そして継続される智恵というのが人々を幸せにしていく』。そこがまさに僕の響きに似ています。

仕事において、その響きはどんな形で現れていますか?
ここ7年程で、さまざまな会社の経営をされてきましたよね。

最初は経営者になるってあまり興味がありませんでした。
PLを追う。数字を出す。出せない時には人を切る。それは絶対嫌だった。

不況だからって自分が育ててきたエンジニア達をやめさせるなんて考えられないと思っていたんです。

その時、本社の社長に言われたのがオムロンの創業者 立石一真氏の言葉「会社にとっての利益は人間にとっての空気。」

空気なかったら人間は生きて行けへんやろ。だから会社にとって利益は出さなあかん。そやけど、「空気を吸う為に生きている人間はいない」と。

これがすべての経営のベースになっています。エンジニアを育て、幸せにする為にはお金がいるやろって。赤字の会社で残業ばっかりさせて、元気になるなんてあらへん。

そやから儲ける仕組みを作って、彼らや彼らの仕事が認められて、大きくなっていくために、お金がいるんやろって。
自分の私利私欲を肥やすためじゃない。今でも創業者の話を先輩達から聞くと、お金にはものすごくうるさかったと。

しかし、それは自分が儲けるんじゃなく、お金を次にまわすことで新しい価値を生み出し、それでみんなが喜んで社会がよくなる。そのためにお金が必要やったからうるさかったんだと。

その言葉を大事にしています。結局ぼくの経営の原点は、創業者 立石一真氏が残されたオムロンのDNAなんですね。

「人を最も幸せにした人が、最も幸せになる。」とか。ほんとうにそう思ってはるから。それがわかり始めたのは最近、40過ぎていろいろな事業を立ち上げだしてからですね。

会社は儲けることが目的ではなく、それを通して社会への貢献と社員の成長と幸せが目的。竹林氏が前の世代の智恵をまさに今・未来へと受け継いでいるのが印象的です。

事業の幹

今、経営に立って大事にしていることは何でしょう?

よく「事業の幹」という話しをします。幹って、この会社がやりたいことは何で、何のために創ったのか、その原点となる本質的な価値は何かということ。

この「事業の幹」を、みんなの中でも自分自身の中でも肚に落としていって、会社の外にもそれを伝えていくこと。事業の幹が肚に落ちていると、みんなの力が一点に集まって、ものすごくいい方向にまわっていきます。

今までいろんな事業を黒字化していくなかで学んできた経験。それだけは叩き込まれたなぁ。だから、この何年も肚落ちのプロセスをやり続けている。それだけしかやってませんね。

CTIブランドでは、「人と人が響き合う社会を創造する」というのを掲げているんだけど、竹林さんはそれを行く先々の会社で創り上げていってるんだなと思います。周りの人を巻き込んだり、同じ思いを持っている人を見つけて行ったり、その中でお互いに共鳴し合っていくように。

「事業の幹」の創造のコツはどんなものでしょうか?

もう一生懸命考えるしかない。その時にただ座って、じっと考えるだけでは出てきません。外部の方々と共鳴して知恵を出していくことが大切。

ソフトウエアの会社のときは、うちの会社の本質的な価値観を考えるプロジェクトを若い人達に任せました。すると、「うちの会社って、知(知識)のエンジンを創る会社なんちゃいますか?」ってものが出てきたんですよ。

ソフトウエアの会社なんで、プログラムを作るのが幹と思っていたのが、「知(知識)のエンジン」は凄いなと思って、それをうちの会社の根幹に置いたんです。

ソフトウエアの会社って、お客さんに言われたことをそのままプログラミングしていきます。ちょうどぼくが社長しているときリーマンショックになって、目の前からどんどんどんどん仕事が無くなっていきました。

言われたとおりプログラムを開発する会社だと思ってるから一番最初に仕事がなくなっていくんです。でも「知のエンジンを創る会社」となると、自分たちが何を軸に置くかが変わる。

そのとき、ちょうど、海外のスマートフォンの会社が日本進出するということで、うちの会社が半分以上のマーケットシェアを持っている漢字変換ソフトを採用してもらえた。それで何億となるわけ。

それまでは、そのソフトを安く売ってその周辺のプログラム開発で仕事をもらうビジネスモデルだったのを、もともと自分たちの智恵として持っていたものがまさに知のエンジンやったと気がついたんです。

まさに、「知のエンジンを創る会社」という幹を置くことでビジネスモデルが変わりました。

マインドが変わった瞬間

まったく知らない事業の経営で「事業の幹」を創造する経験はどうでしたか?

いま思うと一番楽しかったのは、生産会社に行ったときかな。「えらいことになっているから」って言われて。えらいことになっているの嫌ややなあと(笑)。生産は知らんし。

で、フタを開けてみたら、やりやすい仕事は海外に出て、複雑な仕事ばかりが残ってる。受注すればするほど赤になる仕事もありました。
そんな中で、「何が幹やろう」っていうのと、「何がみんな楽しいんやろ」っていう2つだけが疑問で出てきた。

あるとき経済産業省のHPを調べていてびっくりしたのが、ぼくらの会社って、製造業の分類に入っていると思ってたんですよね。でも、製造業じゃなくて、サービス業の分類に入ってた。

サービス業って旅館とか呑み屋さんとか散髪屋さんとかと一緒のグループで、メーカの生産会社と同じグループではない。変やなと思って、しばらく様子を見てたんです。

そしたら、たくさんお客さんが来られている。
そんな中で偉いお客さんが来られると、営業が私に挨拶してくれって言いにくる。

でも、僕らのグループは製造業じゃなくてサービスに入っている。だから、僕らのライバルはメーカーの他の生産会社じゃなくて、九州の温泉旅館と一緒やと。

そうやとしたら、社長は云わば「温泉旅館の女将さん」、あの人は偉いから挨拶しますとかないって。だから、うちは旅館と一緒やから、来てくれるお客さんには"女将として"全員に挨拶しますよと。

それから、何故そんなにたくさんお客さんが来てくれはるんやろなって思うと、例えば、時計を買う時に製造してる工場をわざわざ見に行って買う人はいない。

僕らのお客さんって、あんたんとこの工場これ作れんの?という「プロセス」を買いに来てはるんですよね。

プロセスを提供するって、まさにサービスなんです。
だから、サービス業の分類に入っていた。

でも、みんなは物を作っているから製造業と思いこんでいた、これもうマインドが全然違う。だから、お客さんのニーズと少しづつずれてきていたんです。

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響きから生きる人たち インタビュー

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