「自分の当たり前」が
「人の当たり前」ではないかもしれない
という意識

Q. 「当たり前ではないかもしれない」そこにはどんな思いがあるのですか?

「多様なものを受け入れられる広い心をみんなが持てるような経験をする」これが野外教育の魅力だと思うんですけど、私がそれを伝えるのはイギリスより日本の方がうまく出来ると思ったんです。

日本にいると日本の視点しかない、自分の当たり前が人の当たり前。そういう考え方は危ういと思うんです。指導者が「これが〇〇なんだよ。」と正解のように伝えている。世の中そうでもないんですよ。

私はいろんな国に行っているので、自分の当たり前が人の当たり前ではないかもしれない。そうではない考えを持っている人がいることを知っている。指導者がもっと知っていることが大切で、私はそういう警告を鳴らせるし、そういうことができるかなと思っています。

Q. なぜシェアリングを大事にしているのですか?

授業でもたまに触れるんですけど、思考力と、それを言語化する力と、伝える力というのは全部違っていて、口で言えば伝わるというものじゃないんですよ。

一生懸命言っているのに全然伝わらなかった。人によっていろんな捉え方があるし、思ったように伝わらないという経験をすることが大切だと思っているんです。

授業で私が出来るのは「場」の設定なんですね。あとはその人が見つけるしかないんです。何を見つけるかはその人次第ですけど、それをシェアしあうことで気づくチャンスが生まれると思っています。一方的に感想を書かせて提出するというのはもったいないと思ってシェアリングを大事にしているんです。

違いを受け入れられる存在

Q. バックパッカーのような体験をされていますよね、怖い経験はないんですか?

ちょっとずつ痛い思いして経験していくものだと思うんですよ。日本では何でも平気じゃないですか。まったく無防備だったと思うんですよ。

海外を旅した時の私はあえてオープンでいたいという思いもあり、でも、それもある程度までだよなというのもあり、出来るだけ、最後の瞬間まで閉じずにオープンでいたいと思い、寄ってくる人とは話をしていました。

私、とっても甘い考えをもっていて、自分が信じてオープンでいれば、相手も開いてくれるだろうって思っているんです。

安全を守るには、武装するより、敢えて武器を捨てる方がいいだろうという考えなんですね。それでだまされたし、逆にすごく多くのものをもらいました。

Q. Who are you ? 〜自分は何者なのか?〜

あっ、その問い、きましたね。私よく授業で「自分は何者なのか」って学生に言うんですけどね。まぁ、自分は高野孝子ですとしか言わないと思うんですね。存在意義、、、う〜ん、わかっていたつもりでいたけど言葉にしたことなかったですね。

私は、可能性を解き放ってやりたいことをやるというのを大事にしています。キャンプとか旅とかでもメッセージは全部同じで、「自分が出来ないと思っていることをやってみよう。」と言うんです。絶対出来るから。そうすると可能性が広がって、それが成長で、やりたいことが出来るという流れにつながる。

私が目指しているのは、違うということを受け入れられる存在として、自分がどこに立っているかをわかってもらう。生かされているんだということをわかってもらう。それで自分に出来ることをしていく人になって欲しい。キャンプも含めすべてのプログラムで伝えているメッセージはそこですね。

平和は結果としてあるもの

Q. 高野さんが夢見ている世界ってどんな世界ですか?

すべての人が、生き物としての自分を自覚して、相手のことを考えながら生きる存在であって欲しいなと思いますね。

なんか「平和」みたいな言い方じゃなくて。平和はその結果としてあるものだと思うんです。私は、強い国じゃなくていいから優しい国になって欲しい。みんなが幸せに生きられる国って強い国じゃなくても出来ると思っています。

今の学生を見ていると、「自分に正直に生きる」「思い通りにやってみる」ということが大事だと思っている人が結構多いんです。それは他の人たちを犠牲にして自分勝手に生きるっていう意味じゃないんですけど、それをはき違えている人も多くて、「社会貢献は必要なのか」という問いが出る。問いだからいいんですけどね。

私は学生に「誰かの役に立てたらいいな」と思って欲しいんですよね。「ヤップ島のプログラム(*2)」もしんどいしやめようかな、そろそろ違うことしようかなと思う時もあるんですけど、参加した人たちが、「一生大切にしたいものに気づいた」とか、「迷った時は20年前のヤップ島での体験に戻るんです」と言ったりするのを聞くと、またやろうかなと思うんです。

 

 

*2. ヤップ島のプログラム
エコクラブが、ミクロネシア連邦ヤップ島で1992年以降毎年夏に行っている若者向け約2週間の本格的な自然体験プログラム。

インタビューを振り返って

「二つの願いを同時に携えている在り方」

高野さんへのインタビューを終えて、あらためてなぜ彼女に惹かれ、インタビューを依頼したのかを振り返ってみました。私は、高野さんの「二つの願いを同時に携えている在り方」に強く心惹かれたのでした。

高野さんが「可能性を解き放ち、やりたいことをやることを大事に」されていること、自然体験の場をつくる時もいつも「自分が出来ないと思っていることをやってみよう。」とメッセージされているといいます。

自分の可能性を留めることなくチャレンジすることで可能性が広がり、成長し、やれることが大きくなる、そんなことをご自身の経験から実感し、大事にされている。これがまさに高野さんの響きの源です。

同時にそこには、他の人たちを犠牲にして自分勝手に生きるのではなく、「一人一人が自分を自覚して、違いを受け入れて、相手のことを考えながら生きる存在であってほしい」という高野さんの願いがあり、ご自身もその生き方を体現されています。

高野さんが体験をシェアすることを大事にされているのも、いろんな見方・考え方があるということも話し合うことで気づいていく、みんなの気づく力を信じているからこそなのだと感じました。

「二つの願いを同時に併せ持つ」これはまさにCo-Activeの質感です。自分の可能性を閉じない、そして、それを世界のために使う、そんな高野さんの在り方がとても魅力的でした。

あなたが自分の可能性を解き放ち、やりたいことは何ですか?

 

響きから生きる人たち インタビュー
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