冒険家/早稲田大学教授 高野 孝子さん

1963年生まれ、1986年早稲田大学第一文学部卒業、1989年早稲田大学大学院政治学修士
同年ジャパンタイムズ入社、1991年同社退社、厳冬期のソ連極東地方冒険行、ベーリング海峡を横断

1992年エコクラブ設立、ヤップ島プログラム開始、以後毎年続けている
1995年国際チームで北極海を犬ゾリとカヌースレッドで横断
2002年緒方貞子さんらと社会貢献活動に献身する女性7名に向けた「オメガアワード2002」受賞
2011年から早稲田大学客員教授となり、2013年から教授

探検と教育の
根っこにあるもの

Q. 探検家として十分活躍されているのに、研究や教育もされていますよね。探検だけでもなく教育だけでもなく両方をされているのはなぜですか?

「いつ探検家から教育家になったんですか?」ってよく言われるんですけど、私の中ではずっと一緒なんですよね。

私の中で一番大事なのは体験をシェアすることなんです。自分の中の経験を蓄積する時期っていうのは当然あるんですけど、でもそれをどう生かすかというのが大事なんです。

それは自分の人生にとかじゃなくて、もらったものだから、お世話になった人に返す。これ、お返ししなかったらある意味「強奪」ですよね。勝手に押しかけていって、寝かしてもらって、ご飯食べさせてもらって、すごい経験させてもらって。

自分のためだけじゃないんです。そこで考えたこと、感じたことを伝えなきゃという気持ちが常にありました。

応援してくれた人とか、親とかに報告する義務もあるし、滅多に人が行かないところに行ったのだから、そういうところに行かない人に伝えなきゃと思っていました。

それを教育と呼ぶかどうかはわかりませんが、こっちから教えてあげるという意味ではなくて、シェアして一緒に学び合うというスタンスでいるところはずっと変わらないんです。

一度も冒険家だけだったことはない、常に冒険とシェアが一体なんです。

やっぱり人って自分がやったことでないと伝えられないし、自分が出来ることでないと教えられないじゃないですか。自分が高まっていないと出すものがない。

ずっとそう思っていたんですけど、北極から帰って来てからは教育団体「エコプラス(*1)」が大変になって、ずっと出しっぱなしで何も与えられるものがなくなっちゃう、そういう危機感がありました。

もっと広い視野とか知識とか学び方とか伝え方とかが知りたくて、大学院にいこうと思ってケンブリッヂに行ったんです。

Q. 大学院ではどんな研究をされたのですか?

環境と開発がテーマでしたので、サステナビリティですね。それを教育とつなげるかどうかは私次第でした。でも、1年間経って私が出せるものが増えたという感じがしなくて、学び方とか知に触れたい、このまま帰っても出せるものもあまりないと思いました。

私、ケンブリッヂではたらいまわしだったんです。
環境だと言えば地理学だと言うし、あなたの言うことは教育でしょうと教育学に回され、先住民族とか言うと文化人類学なんじゃないかと言われ、結局私の求めているものは学科を越えるものだったんですね。

決める時は
自分の感覚に聴いてみる

Q. 博士号を取るに至った経緯は?

ケンブリッヂでは、シベリアの極東の研究をやってくれるなら博士号を取ることを歓迎すると言われ、出来るけど違うなと思ったんです。それをやると一度決めてみたら、なんか落ち着かない。それで違うと思いました。

私、決める時ってそうしてみるんです。一度全身でそのモードになってみる、そうしてなんか違和感があったら自分にとっては正解じゃない。違うよっていう声が聞こえるんです。

そんな時の一本の電話が運命の出会いでした。
電話をしたエジンバラの教授から「SLEって知ってる?」って言われたんです。Significant Life Experienceという研究領域があるんですよ。

「人生において重大な経験」ってことですね。その研究は、環境課題に積極的に取り組んでいる活動家たちに、どういうきっかけでそういうことをやることになったかをインタビューすることでした。

一番影響が大きいのは、小さい時の自然体験だというのを聞いて、「この人は私の言いたいことがわかっている」と思ったんです。

体験とか、文化とか人と自然の関係とかに理解があることがわかりエジンバラに行き、その教授が博士号の担当教授になりました。

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*1. エコプラス
とびっきりの自然体験を提供してきたエコクラブ(1992年設立)と、日本と世界の子どもらに地球的視野での環境教育プログラムを提供してきたワールドスクールネットワーク(1994年設立)の二つの母体組織として2003年6月に設立された特定非営利活動法人

 
響きから生きる人たち インタビュー

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