自分で自分をリードする

Q. 「コーアクティブ・コーチング」に出会った経緯を教えてください。

医者になって4年目に、研修で島で三ヶ月働いていた時期に読んだ本の中で、「コーチング」というキーワードをたまたま見つけたのがきっかけです。

当時読んでいた本の中に、自分のビジョンを考えるのが大事で、そのためには、自分で自分をコーチングできるようになるのが一番いい、と書いてあって。

確かに、自分で自分の考え方や思考を探って、自分の気づきを重ねてリードしていけるのは、人としても、医者としても大事だと思っていました。

その本の中に、コーチングを学べる場所として、CTIが紹介されていたんです。

また、当時読んでいた哲学書に、人を支援する人のあり方として、相手と話している一瞬一瞬をスローモーションで感じながら過ごすことが大事だと書いてあって。
そういうのも読みながら島の人と話をする中で、時間の感覚が変わってきていて、何だろうこれ、と思いながらいた時期にコーチングを知ったんです。

 

Q.CTIの学びの場、扉を開けてみた世界はどうでしたか?

基礎コースのコースリーダーの言葉でよく覚えているのは、「普通の研修会だと僕らが何か情報を伝えて聞いて学ぶことが多いけど、この2日半は、まず皆さんにいろいろ試しにやってもらって、そこから感じたことを共有しながら、皆さんに学んでいってもらいます」と言っていたことです。

物事を学んだり身につける方法に、当時自分は関心がありました。誰かが誰かに情報を伝えたり教える方法だけじゃないやり方があるのは薄ぼんやり分かっていて、自分なりにやっていたので、それって、自分が最近大事にしたいと思っていることと似ているなと思いました。

それから、来ている人たちが、全然違う業界の人たちが多かったことが印象に残っています。医者は、最初の4〜5年は医療の世界にとどまるので、そのまま閉じこもって突っ走る人のほうが多いんです。異なる職種の人たちと話すチャンスは、自分にとって世界を開くきっかけになりました。

言葉にできないものを無理に言葉にせずに伝えるのもおもしろいと思い、一回で終わらせるのはもったいないと思って、応用コースに進みました。

 

Q.コーアクティブ・コーチングの学びが、今の宮地さんに、どんなふうに息づいていますか?

さらっというと、やわらかさ、しなやかさ、こだわらなさ、ですね。それは、「今ここ」を大切にする感覚だと思います。

それから、共にいられないものを意識すること。でも、そういうものと一緒にいること。ものの見方は、自分に選ぶ権利があること。そういうところがものすごくしなやかさとか、こだわらなさにつながっていると思っています。

患者さんの
大事な場所にたどり着く

Q. コーアクティブ・コーチングは、仕事の現場ではどんな風に活きていますか?

外来での患者さんとの面接の際に、CTIのコーアクティブ・コーチングで学んだことを生かしなから深く傾聴することで、家庭医なりの探りかたでは行けない場所に行けたり、患者さんの心の中の、解きほぐせないものを解きほぐせたりすることがあります。

 

Q.患者さんとの関わりの中で印象的な場面はありますか?

施設に入所している方が、本当に具合が悪くなって、亡くなりそうになっていた場面です。 ご家族を呼んで、状況を話して、最後の時間をどう過ごすかを相談するのですが、通常、治療するかしないか、どこでそれをやるかの判断が医者の仕事としては一番大事になります。その選択の裏にあるその人の想い、大事にしたいものをうまくたぐり寄せながら決めていくんです。

その時にいらしたご家族が、普通のおみとりの段階でのご家族が持っている感情とはちょっと違う感覚があるように直感で感じました。

お話を伺ったら、ご本人が、お母様に高校生のときにかけた一言について謝れずにいることが、ものすごく後悔として残っているのが分かりました。
ですので、ご本人が本当に何をされたいのかを伺って、背中を押す働きかけをしました。

お母様はその後すぐに亡くなられましたが、最後に、「あの時のあの言葉がなかったら、私はずっとあの後悔を抱えていたと思います」と話してくださいました。

当時、亡くなった親御さんは80歳ぐらい、その方は50歳ぐらいでした。長年のそういうものをそのタイミングでちゃんと全うさせることができたことが印象に残っています。そういうことがたまに起こるんです。

実現したい世界

Q. 宮地さんが実現したい世界はどんな世界ですか?

これって、結構難しい質問だなあ、と思います。
世界って、そんなに自分がどんどんやって変わっていく、決まっていくものじゃなくて。どちらかというと、もっと大きな力に動かされていて、僕らは存在しているなっていう感覚があるんです。

そういうところを、今の人間は失っているんじゃないのかなってよく思うんです。それはたぶん、自分の仕事の影響もあるだろうし、勤めている場所が自然がいっぱいあることも影響していると思います。

世界にいる人みんなが分かっていて、そういう世界に対するちょっと控えめなスタンスが普通になっている世界のほうがいいんじゃないのかな、と思います。

そういう世界になったほうが、いろんな人の感謝とか、いろんな人の思いやりとかが、一つひとつ大事にされる気がするんです。

もっともっとみたいな感じじゃなくて、もっと力の抜けた感じというか。いろんなものが許して許されていて、いろんなことが余裕を持って受けとめられる、そんな、多様なものが許容される世界になるといいですね。

Q.コーアクティブ・コーチングを学ぶ人に、伝えたいことはありますか?

コーアクティブ・コーチングの関わりでこそ触れられるその人のあり方とか、その人自身も気づけないその人の見え方みたいなところを相手と一緒に見つけることができるので、そういう部分は最大限に生かせるようになってほしいですね。

同時に、その次に意識してほしいのは、それはあくまでやり方の一つだということです。
みなさんの持ち場で、みなさんのやりかたで、持ち場で培ったものとCTIのコーアクティブ・コーチングを混ぜて、第三のものを産むことを目指して頑張ってほしいです。

インタビューを振り返って

「人の人生の節目の時に、心の変化を支えたい」。

人の中にある思いやりの力を信じるからこその、宮地さんの響きの源が、ここにあります。人の持つ思いやりが人と人との物語を紡いでゆくことに、宮地さんの響きがあり、その響きにつながりながら、ひとつひとつの役割を、日々、丁寧に果たしていらっしゃることが伝わってきました。

そして、ご自身の持ち場で日々患者様と接する中で、真摯に人に学び、多くのことを受け取り、それをさらに、宮地さんの次の世代や他の地域に渡してゆこうと尽力されているお姿が素晴らしいと感じました。

患者様ご家族との看とりの場面は、とても印象的です。誰しも、家族としてともに生きながらも、大切だけれど言葉にされていない言葉や気持ちがあります。

節目を迎えたご家族の中にある思いに寄り添い、耳を澄ませて、大切なことが全うされるように、そっと背中を押す。そして、ご家族の中に、やさしい時間が流れてゆく。そんな瞬間に立ち会う宮地さんの役割は、とても尊いものだと感じます。

目に見えていることや聞こえてくる言葉だけではなく、その奥にある、その人の想いや願いに耳を澄ませ、問うてゆく。
コーアクティブ・コーチングでは、事柄だけでなく、人そのものに焦点を当てることを大切にしています。なぜならば、その人の中にこそ、その人ならではの、次の物語を創ってゆく種があると信じているからです。

あなたの響きの源は、何ですか?

 

響きから生きる人たち インタビュー
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