国連平和大学(University for Peace)修士課程「ジェンダーと平和構築」在籍中 藤原 加代さん

早稲田大学人間科学部卒業後、韓国に渡り現地の大学生を対象とした体験型リーダーシップ開発に4年間携わる。
日本に帰国後、人材教育会社にてコンサルティング営業、CTIジャパンのオフィスにて事務局として従事。
2013年よりJICA青年海外協力隊員として中米のニカラグアにて2年間、農村部の10代の妊婦ケアー、および若年妊娠予防のための活動を行う。2015年8月からコスタリカの国連平和大学(University for Peace)修士課程「ジェンダーと平和構築」在籍中。
2009年CTIコーチング応用コース(92期)修了
2012年コーアクティブ・リーダーシッププログラム修了

自分は何のために
生きているんだろう?

藤原さんの物語のはじまりは、どのあたりからだと思われますか?

思春期の頃、「自分が今この瞬間に死んでも世界が何も変わらないとしたら、自分は何のために生きているんだろう?」と問い続け、孤独を感じていたところからだと思います。

10代後半はスポーツに打ち込み、勝って周りに認められることで、孤独感を満たしていたように思います。

一方で、スポーツの世界には限界があると感じていた頃、世の中の真理を知りたくて、当時縁があった韓国に渡りました。
それは「自分がなぜ生きているのか?」の答えを探求する旅でもありました。

持ち続けていた問いが、藤原さんを韓国へ導いたのですね。

そうですね。それで、大学を卒業して韓国へ行き、大学生のリーダーシップの研修に関する仕事をする中で、参加者との1対1の面談を通して、何を学びたいのか、体験を通じて何を学んだのかを整理するということをずっとやっていました。

日本に帰国後、これを仕事にするんだったらなんだろう?と考え、ネットでいろいろと調べた結果「コーチング」を知りました。

マズローの欲求5段階説(*1)ってありますよね。
最初は生理的欲求。その後に、安全欲求、そして社会で受け入れられることを求める。一番上が自己実現欲求。

そして、一番上の自己実現欲求が満たされた人たちは、その次に、どこに向かうのか、何を求めるのかを考えたときに、他己実現だと思うんですよね。

世界の人たちが自己実現を達成できたら、つまりそれぞれが本当に望む生きたい人生を生きることができていたら、世界から余計な争いや葛藤がなくなると思うのです。
そしたら、その人たちが次に求めるようになるのは、他の人の役に立つ喜びではないかと。みんなが他の人に喜んでもらうことを求めて生き合う。

そんな世界ってすばらしいなあ!そして、そんな他己実現の世界の一歩手前の自己実現を応援するのがコーチングだと思ったんです。

 

実際にコーチングの学びの扉を開けてみて、どんな体験をされましたか?

最初の基礎コースは違和感が全くなく「そうそう、これ!」という感覚がありました。コースの一番最初から人生で実現したいことを語っていて、私は「平和な世界を創りたい」と話していました。普段なら人の前で言えないと思っていたことも言える空間でしたね。

コースを担当するリーダーの「コーチの帽子をかぶっている時だけがコーチじゃない。帽子をかぶってなくてもそういう関わりが当たり前になって、この世からコーチングがなくなったらいい」という言葉に、これは本物だ!と思いました。

「コーチングがすごいのではなく、人が素晴らしい」という言葉にもとても響いて、次の応用コースに進みました。

 

学びながら、どんなことを感じていましたか?

コーチングを通して、人の自己実現を応援することで、社会がよくなる。そこに自分のミッションを感じていたように思います。

それから、コースのデモンストレーションの中でコーチングを受けた時に、「コーチングや組織開発と国際協力が交わる場所で何かやりたい」というビジョンが初めて出てきたことを覚えています。

答えではなく、
問いを握りながら生きる

当時は、研修会社で会社員をしながら、会社の中で自分がやれること、やりたいことの限界を感じていました。そんな中、リーダーシップ・プログラム(*2)に参加しながら、次の仕事が決まる前に、会社を辞めました。
一般的には次が決まってから会社を辞める場合が多いと思うのですが、不安や恐れもありましたが、手放したら何かが絶対にやってくる、という確信がありました。

 

リーダーシップ・プログラムは藤原さんにとってどんな経験でしたか?

自分の命を何に使うのか、どんな行動を起こしていくのか、自分は何を信じるのか。自分がずっと問い続けていたそれらの問いを握りながら生きるということが、クリアになりました。

そして、これっていう答えが常にあるわけではないのですが、行動し、探求し続けながら生きるという軸を持つことができましたし、そうやって生きることを応援しあえる生涯の仲間を得ることができました。

自分の特徴や強みを知り、それらを活かしながらリーダーシップを発揮していったらいいんだと、迷いなくその自分にOKを出せる感覚を得たことも大きいです。

以前は、ファシリテーションを学びながらも、人前に出て何かをしたり、話すことに苦手意識がありましたが、リーダーシップ・プログラムの体験を通じて、自分の感じていることは大いなるものの一部であり、自分の個人的なものじゃない。

だからこそ全然出してもいいし、出した時の周りの反応が痛いことがあっても、自分ごととして受けとらず「必要なことが起こっている」と受けとって、そこから創りだすことができるようになりました。

JICAの青年海外協力隊への参加に踏み出したことも、大きな変化です。リーダーシップ・プログラムに参加していなかったら、絶対に行ってなかったと思います。

文化や宗教が違っても、
人としては一緒

とても大きな決断ですよね。
何が藤原さんを後押ししたのですか?

20代の頃、韓国での仕事でいろんな国に行かせてもらったときに、文化や宗教が違っても、やっぱり私達は、人として一緒なんだ、という体験をしました。

地球の裏側で苦しんでいる人達がいる時に、会って話したことはなくても友達になれるのが分かるし、人として同じという感覚があります。
だからこそ、放っておけないし、放っておける自分でありたくない、という思いがあります。

すごく大きく言うと、世界で悲しみの涙を流している人がいる限り、私自身の100%の幸せはないと思っています。

同時に、私が生きている間に、世界のすべての苦しみや悲しみがなくなるなんて、実際は難しいと思っていて。そこに自分がどこまで貢献できるかにチャレンジしようと思ったときに、まず現場に身を置いてみることを決めました。

自分の中で、どこかに、世界の究極の悲しみや、孤独、理不尽さに寄り添いたい、という想いがあるんです。

だぶんそれは、自分自身が自分なりに、孤独の極みだと思っていた思春期があったからだと思うんですけどね。

ニカラグアという国で見た現実

当時、転職して1年もたっていなかったので、申し訳なさもありましたが、まず2年間、現場に身を置いてみよう、それなら早いほうがいいと思い、青年海外協力隊員として、ニカラグアへ行きました。

 

実際に現場に身を置いてみて、どうでしたか?

人種、宗教、文化が違っても、人として一緒だから放っておけないと思って世界に出たのですが、出てみたら、こいつら宇宙人だ!と思いました(笑)。
約束を守らない、時間を守らない、嘘をつく、盗む。これ、人としてどういう感覚なんだろう??全く理解できず、そもそもが違う!無理!!と思いました。

国際協力って、ドロドロしていて、きれいごとのボランティア・ストーリーじゃないというのを現場で目の当たりにしました。行ったら何も求められていなくて、自分で仕事を見つけなきゃいけなかったし、思っていたほど現地からは期待されてない。くれるならもらうし、やってくれるならやっておいて、みたいなね。

藤原さんにとって、特にどんな点が難しかったですか?

現地の人と、コーアクティブな関係(*3)を築いて、何かを一緒に創っていくことですね。
一つの例でいうと、鶏小屋プロジェクトをやっていました。私が働いていたところにいる妊婦さんの栄養状態がとても悪かったので、卵を食べて、少しでもタンパク質を摂れるようにと思い、始めました。

日本にいるみなさんのおかげで鶏小屋の枠を作るお金も、ニワトリを買うお金も準備ができました。
でも、私が一人でやってしまうのは何か違うなと思って。一緒に創りたかったんです。

それで、最初は材料を買うから、組み立てる人手をなんとかしてとお願いしました。でも、結局遅延に遅延が続いて1年が過ぎてしまって。最後は、ニワトリを買うお金は出すから、せめて買ってきてとお願いしました。
でもなかなか進まなくて、結局、私が帰国する2日前くらいにようやく買って来てくれました。

もう一つ、文化的な難しさとしては、男尊女卑の根深さです。私が向き合ってきた中で一番重かったのが、12歳、13歳の少女が性暴力にあって妊娠して、選択の余地なく一人で出産しなければならない、という状態でした。

しかもその男性が、お母さんの再婚相手だったり、従兄弟やおじさんだったりして。ニカラグアでは中絶は違法なので、そういう状態で妊娠して、子供を産まざるをえない少女達と向き合ってきた経験が、難しさというか・・・最初は、衝撃でした。

ニカラグアでは、そういうケースがあまりにも多くて、社会がどこかで仕方ないと思っている部分もありました。

例えば母親の再婚相手がそういうことをしていた場合、母親が、経済的な基盤を失うことや、近所から白い目で見られるのが怖くて、娘を守らない場合が多い。

救いようがなく見える、ひどい状態です。
そしてそれがまた続いていく。そういうケースを何件も見ていると、もう、社会的に手の打ち様がないのかなあ、っていう気持ちが自分の中にも湧いてきてしまうくらいに、たくさん見てきました。

私は少女たちと一緒に折り紙をしたり、雑談したり、市場に買い物に行ったり、友達に近い関係でいることができたので、日常の世界に起こっている現実を現場目線で見ることができたという点では、日本ではなかなかできない経験でした。

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*1. マズローの欲求5段階説
アメリカ合衆国の心理学者・アブラハム・マズローが「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したもの。

 

*2. リーダーシップ・プログラム
自分が本来持っている個性や強みを最大限に発揮し、人と恊働しながら、自分が信じることをこの世の中で実現するためのやり方(Doing)やあり方(Being)を体験を通じて学ぶ、約10ヶ月に渡るプログラム。
http://www.thecoaches.co.jp/leadership/

*3. コーアクティブな関係
お互いが相手の可能性を信じ力を合わせあい恊働する、対等で力強い関係。

響きから生きる人たち インタビュー

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